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⑤『彼岸過迄』「雨の降る日」を読み解く

 敬太郎は、田口の世話である地位を得て、田口の家に出入りできるようになりました。
 そこで、松本が雨の日に面会を拒む理由を知ることになりました。
 松本と会っていた女の名前が千代子であることも知りました。

一 敬太郎の位置獲得

一 田口が敬太郎に相当の位置を拵えてくれることになりました。
敬太郎が田口の家に行く機会が増えます。

一種間の延びた彼の調子と、比較的引き締った田口の家風と、差向いで坐る時間の欠乏とが、容易に打ち解けがたい境遇に彼らを置き去りにした。

青空文庫 Kindle版 p.171

敬太郎は、停留所の女も含めて田口の家族と話す機会があるのですが、どうも人種が違うのか打ち解けた話はできません。

「あの叔父さんも随分変ってるのね。雨が降ると一しきりよく御客を断わった事があってよ。今でもそうかしら。」

青空文庫 Kindle版 p.172

須永のところに遊びに来ていた千代子からこんな話がありました。松本には雨の降る日は特別の意味があるようです。

二 松本が雨の日の来客との面会を拒絶する理由

二 敬太郎は、松本が雨の日の来客との面会を拒絶する理由を千代子から聞きます。
雨の降る日に突然松本の娘が死んでしまったのです。
松本夫婦には5人の子供がいました。千代子は宵子をいちばん可愛がっていました。

三 雨の降る日の出来事

三 千代子は松本の家に遊びに来ていました。千代子がいつもの通り宵子を可愛がっていると、雨が降り出しました。松本に来客があります。千代子が宵子の食事の世話をしていると、急に宵子がぐったりとしてしまいました。

四 宵子の死亡

四 宵子の症状は重篤でした。接客中の松本も宵子を見に来ました。宵子は死んでしまいました。

五 千代子の悲しみ

五 千代子は夜通し宵子を見てすすり泣きをしていました。夜が明けます。

六 宵子の葬式

六 宵子の通夜が済み、あくる日の葬式が始まりました。

車の上で、切なさの少し減った今よりも、苦しいくらい悲しかった昨日一昨日の気分の方が、清くて美くしい物を多量に含んでいたらしく考えて、その時味わった痛烈な悲哀をかえって恋しく思った。

青空文庫 Kindle版 p.186

葬式が済んで寺から矢来に戻るときの千代子の感情です。

七 骨上での出来事

七 骨上には松本の妻の御仙、千代子、須永、下女の清が行きました。

八 帰宅

八 骨上が済み、四人(よつたり)は松本宅に帰りました。

「己は雨の降る日に紹介状を持って会いに来る男が厭になった。」

青空文庫 Kindle版 p.191
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