子どもの頃は『坊っちゃん』、次に『吾輩は猫である』、そして中学生、高校生の頃に『こころ』を読んだ人が多いのではないでしょうか。
漱石の初期の作品『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『草枕』、次に前期三部作の『三四郎』『それから』『門』、そして後期三部作『彼岸過迄』『行人』『こころ』をこの読書ブログでは取り上げています。
漱石の作品をデビュー作『吾輩は猫である』から読んでいくと、漱石の歩んだ道と重ね合わさる部分が見えてきす。
作風や、読者が受ける刺激が、作品ごとに変わっていくのがよく分かります。それは、漱石の人生の反映のように思えます。
このブログの上位検索キーワードを調べると、「こころ」が入ったものが多くあります。やはり『こころ』は人気があり、100年経っても読み継がれる名小説なのだと思います。
初期の作品
『吾輩は猫である』
漱石のデビュー作です。
新聞紙上で掲載されて大人気となった作品です。1回限りの予定が大人気であったために連載となった小説です。
漱石は、その頃には自然派が主流であったのに対し、余裕派と呼ばれました。
「猫」の目を通して人間を風刺的に描いた作品で、ユーモアもありますが、当時の社会、当時の人間の生き方に対する厳しい批判が描かれています。
『坊っちゃん』
大変読みやすい小説です。「坊っちゃん」は、漱石の小説に登場する主人公の中で唯一男らしい人物かもしれません。痛快小説などと評されることもあります。
『草枕』
『草枕』は漱石の名作の中の一つの作品です。
画工の余は、非人情の旅の中で那美という女に出会います。
那美は、うつくしくミステリアスな女で、余を度々驚かします。
余は、那美の表情にどこか物足りなさを感じます。
余が那美に求める表情が表われ、那美の画を描くことができるのか・・・・・
前期三部作
前期三部作になると悩む主人公が登場します。その悩みは青年期特有の悩み、迷いといったもの、結婚期の悩みなどが描かれており、死をイメージするような深刻な悩みではありません。
『三四郎』
前期三部作の最初の作品です。
主人公「小川三四郎」は、謎めいた女里見美禰子に惑わされます。田舎から上京し、周囲の人に振り回されながら苦い思いを味わいます。
『それから』
前期三部作の2番目の作品です。
主人公の「代助」は、現実の世の中と自身とのギャップ、型にはまった古い道徳観と、自然に生きようとする自身とのギャップに苦しむ人物です。
『門』
前期三部作の最後の作品です。
主人公の「宗助」と妻の御米は、彼らが為した不徳義な結婚により、社会から非難されるべき立場の者として、一般社会とは距離をおいて生活しています。
御米には耐え難い辛い過去があります。
宗助には通り抜けなければならない門があります。
後期三部作
後期三部作では、ここまで描くのかと思わせるほど、人間の心理の奥深くまで入り込んだ魂、心理の描写がなされています。
漱石は「修善寺の大患」で一時は危篤状態に陥りました。その後に書かれた作品群で、死のイメージが付きまとっているように感じます。
『彼岸過迄』
「修善寺の大患」後の後期三部作最初の作品です。
闘病生活で作家活動を休止していたため、この作品には大変力を入れたようです。
短編小説が集まって一つの長編小説となっているのがこの小説の特徴です。
『彼岸過迄』は、人物の対比、人間関係の描写が実に興味深いところです。
『行人』
後期三部作の2番目の作品です。
「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」という重い言葉が出てきます。
人間の精神的苦悩を描いた作品です。
『こころ』
後期三部作の最後の作品です。
漱石の小説の中でいちばんの人気と言っていいでしょう。
人間の心の移り変わりが描かれています。
第三編は「下 先生と遺書」ですが、読み終わった後に暗いイメージが残らないのが不思議です。